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日韓会談文書公開の意義
―「慰安婦」問題から―

梁 澄子
(2006年3月17日)
韓国政府は昨年8月、日韓会談文書を全面公開した際、「慰安婦」問題、サハリン残留韓国人問題、在韓被爆者問題については外交文書に記述が無く、「日本政府に法的責任が残っている」と述べた。

1992年12月に日本軍「慰安婦」被害者である金学順さんらが提訴し、「慰安婦」被害者への補償問題が浮上した当初から、実は、日韓会談において「慰安婦」問題は議論されていないのだから、「日韓請求権協定で解決済み」という日本政府の主張は通らない、と私たちは主張してきた。この度の韓国政府の見解は、これを裏打ちするものとなる。

しかしこの間、日本政府はあらゆる戦後補償問題に対し「サンフランシスコ条約および二国間条約により解決済み」と繰り返してきた。「慰安婦」裁判においては、在日の宋神道裁判で東京高裁の鬼頭季郎裁判官が、「1947年8月15日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるもの」、つまり原告・宋神道さんのような在日韓国人については、「日本政府の対応措置に委ねられたことになる」と述べ、また、韓国「遺族会裁判」の原告・沈美子さんについても同期間に日本にいたことがあることを理由に損害賠償請求権が残っていたと述べたが(両原告共、除斥期間を適用して請求は棄却)、その他の韓国人被害者に対しては、日韓請求権協定によって外交保護権のみならず、損害賠償請求権も消滅したと判示している。

日本政府および司法のこのような主張が、一方の締約国である韓国政府によって、はっきりと否定された今、日本政府が自らの主張をあくまでも正当化しようとするならば、日韓会談文書を全面的に公開して、「慰安婦」問題が当時から議論の俎上に昇っていたことを証明して見せなければならない。そのような姿勢も示さずに「日韓条約によって解決済み」論はもはや通用しないのである。