※以下は訴状実物と全く同じ内容ですが、文字の配置および段送り位置に若干の違いがあります。


訴   状
 
2006年12月18日
 
東京地方裁判所  御 中
 
原告訴訟代理人      

弁護士 東  澤     靖
 
同  川  口  和  子
 
同  二  関  辰  郎
 
同  小 町 谷  育  子
 
同  魚  住  昭  三
 
同  古  本  晴  英
 
当事者の表示       
 別紙当事者目録のとおり
 
第4次日韓会談本会議議事録一部不開示決定処分取消等請求事件
 訴訟物の価額 金160万円
 貼用印紙額  金1万3000円
 
第1 請求の趣旨
 1 外務大臣麻生太郎が、平成18年8月17日付けで原告らに対してした別紙一部不開示文書目録記載の各行政文書を不開示とする決定を取り消す
 2 外務大臣麻生太郎は、原告らに対し、前項の各行政文書の不開示部分を開示せよ
 3 第1項の行政文書を除く別紙請求文書目録記載の行政文書を外務大臣麻生太郎が開示しないことの違法を確認する
 4 外務大臣麻生太郎は、原告らに対し、第3項記載の文書を開示せよ
 5 訴訟費用は被告の負担とする
 との裁判を求める。
 
第2 請求の原因
 1 本件情報公開請求の経過
  (1) 原告らは、2006年(平成18年)4月25日、外務大臣麻生太郎(以下「処分庁」という。)に対し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下、「情報公開法」という。)に基づき、別紙請求文書目録記載の文書(以下、「本件請求文書」という。)の開示を請求した(甲1)。
  (2) 処分庁は、原告らに対し、同年5月25日、「開示請求に係る決定期限の特例の適用について」と題する書面を送付した(甲2)。処分庁は、情報公開法11条に基づき、行政文書の開示請求に係る決定の期限の特例を適用するとし、新たな開示決定等の期限として、「平成18年06月24日までに可能な部分について開示決定等を行い、残りの部分については、平成20年05年26日までに開示決定等を行う予定」とした。そして、その理由として、「対象となる行政文書が著しく大量でありかつ、担当課において他に処理すべき開示請求案件が著しく多くまた、他の事務が著しく繁忙であり、開示請求日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあるため」をあげた。
  (3) 処分庁は、決定期限である6月24日に至っても、決定処分を行わず、原告らの度重なる督促後、ようやく2006年8月17日になって、本件請求文書のうち、第4次日韓会談本会議議事録(第1回から第9回まで)及び同再開本会議議事録(第1回から第4回まで)(別紙請求文書目録の27の一部、以下、これらの文書を総称して「本件文書」という。)について、その一部を不開示とする処分(以下、「本件処分」という。)をした(甲3)。
    なお、第4次日韓会談本会議議事録第10回及び再開本会議議事録の第5回(第15回)は、本件処分の対象とはなっていない。
  (4) 本件処分の理由として、以下の記載がある。
    「公にすることにより、交渉上不利益を被るおそれがあるため、不開示としました。」
 
 2 本件処分の違法性
 (1) 被告が、本件処分により開示した部分は、会議が開催された日時や出席者、次回会合の開催日等といった外形的な情報がほとんどであり、会議の実質的内容は基本的に含まれていない(甲4の1ないし13)。
   しかも、開示部分は、会議が開催された当時に新聞発表された情報の範囲に一致している。そもそも交渉が現に進行している時点で新聞発表することができる範囲と、交渉がはるか昔に終結し会議から半世紀近く経過した現時点における開示範囲は異なるはずである。すなわち、2001年に情報公開法が施行され、行政機関の保有する情報については、その「一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」(情報公開法1条)が求められているのであり、行政機関の説明責任は、半世紀前の交渉時より一層広く認められるべきである。半世紀前の開示範囲と現在の開示範囲が一致すること自体きわめて不合理・不適切である。
 (2) 次に、会談の相手国であった韓国では、本件文書に対応する韓日協定外交文書が韓国の情報公開法に基づいて2005年に全面開示されており、何人でも自由に当該文書を入手できる状態になっている。
 (3) 韓国で開示されている第4次日韓会談本会議議事録を検討すると、そこに記載されている内容は、たとえば、会議の出席者氏名、会議で使用する言語(韓国側は韓国語または英語、日本側は日本語または英語)、議事録の作成方法(双方の起草担当官が作成した後、次回会合時に提出して、双方の主席代表が確認する)、プレス・リリースの方法(双方が報道関係担当官を1名指名し、合同プレス・リリースを本会議の最後に首席代表の指示を受けた報道担当官が作成)、設置する委員会に関するやりとり(韓国側が設置する委員会を提案したところ、日本側が、まだ研究中であるとしてただちには回答をしなかったこと等)、次回会議の日程調整などである。
   このうち、特に重要なのは議事録の作成方法であり、議事録は両国がそれぞれ作成したとはいえ、相互に内容確認をしていたという点である。かかる作成方法をとっていた以上、両国の議事録の内容は同一であるか、少なくとも著しく類似したものになっていたはずである。
   したがって、同一ないし著しく類似の情報がすでに韓国において開示され何人でも入手できる以上、日本においてのみ、対応する情報を不開示とする根拠はまったくない。
   韓国側議事録に記載された上記事項からすると、外務省が、本件処分で不開示とした部分に記載されている事項は、韓国側議事録と同様、会議での使用言語などの会議の円滑な運営方法等に関わる事項が中心であると推定される。
 (4) 以上により、本件文書を開示することによって、「交渉上の不利益を被るおそれ」がないことは明らかであり、したがって、これを情報公開法5条3号に該当するとして一部不開示とした本件処分は違法である。
 (5) よって、本件について一部不開示とした処分は取消を免れない。
 
 3 本件不開示部分の開示の義務付け
  (1) 行政事件訴訟法は、3条6項2号で、行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合において、当該行政庁がその処分をすべきであるにもかかわらずこれがされないときに、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求めることができるとしている(いわゆる申請満足型義務付け訴訟)。そして、同法37条の3、1項2号及び5項は、「当該法令に基づく申請を・・・棄却する旨の処分・・・がされた場合において、当該処分・・・が取り消されるべきもので」ある場合に(訴訟要件)、「請求に理由があると認められ」、行政庁が当該行政処分をすべきであることが根拠法令上「明らか」であると認められる場合には(本案勝訴要件)、当該処分の義務付けが認められるとしている。
  (2) 前記1(2)で述べたとおり、本件文書は、不開示事由に該当せず、取り消されるべきものである(訴訟要件の充足)。
    また、本件処分の根拠となっている情報公開法は、行政庁に対し、行政文書が不開示事由に該当しない場合には、原則として、当該文書の開示を義務付けている(情報公開法5条)。本件では、前記2のとおり、本件文書は不開示事由に該当しないので、処分庁は、原則のとおり、本件文書を開示する義務を負っている。すなわち、本件請求に理由があり、処分庁が当該行政処分をすべきことが情報公開法上明らかである(本案勝訴要件の充足)。
  (3) したがって、処分庁に、本件文書の不開示部分の開示の義務付けが認められる。
 
 4 残りの文書が開示されないことが違法であること
  (1) 情報公開法11条は、開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、「相当の部分」につき開示決定をし、残りの文書について相当の期間内に開示決定等をすることができるとしている。
  (2) ここで、「相当の部分」とは、処分庁が通常60日以内に開示決定等ができる分量をいうが、本件処分により開示されたのは、別紙請求文書目録の58項目のうち1項目(27項)の一部で、分量にするとわずか65頁にすぎなかった(甲4の1ないし13)。請求文書の分量と比較すると、この開示の分量は著しく少量であり、情報公開法11条の「相当の部分」とはいえない。
  (3) 加えて、処分庁は、残りの部分の開示決定等の期限として、前記1(2)で述べたとおり、開示請求日から2年以上後の2008年(平成20年)5月26日を指定している。情報公開法11条の「相当の期間」とは、行政機関が処理するに当たって必要とされる合理的な期間をいうが、本来の処理期間である30日と比較すると、処分庁の指定した2年の期間は著しく長期にわたるものであり、およそ「相当の期間」ではない。
  (4) 実際、本件開示請求から約半年が経過したが、8月17日の本件文書の一部不開示以後、たった1つの文書も開示されていない。これは、処分庁の述べる「対象となる行政文書が著しく大量でありかつ、担当課において他に処理すべき開示請求案件が著しく多くまた、他の事務が著しく繁忙であ」るという理由では、全く説明がつかない事態である。
  (5) したがって、処分庁の本件開示請求文書を開示しないことは違法であることは明白である。
 
 5 残りの文書の開示の義務付け
  (1) 行政事件訴訟法は、37条の3、1項1号及び5項は、当該法令に基づく申請に対し相当の期限内に何らの処分がされない場合(訴訟要件)、「請求に理由があると認められ」、行政庁が当該行政処分をすべきであることが根拠法令上「明らか」であると認められる場合には(本案勝訴要件)、当該処分の義務付けが認められるとしている。
  (2) 情報公開法は、原則として、開示決定を請求日から30日以内としており(同法10条1項)、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、期限を30日以内に限り延長することができるとしている(同法10条2項)。開示決定等の期限の特例(同法11条)も、「残りの行政文書については相当の期間内」に設定することが求められている。
    前記4のとおり、処分庁が残りの文書を開示しないことは違法であり、かつ、情報公開法が規定する開示決定等の期限の特例の「相当な期間」にも該当しないことは明らかである(訴訟要件・本案勝訴要件の充足)。
  (3) したがって、処分庁に、残りの不開示部分の開示の義務付けが認められる。
 
 6 よって、原告らは、行政事件訴訟法3条2項、5項、6項及び同法37条の3、1項、5項に基づき、処分庁に対し、本件処分の取消し、本件不開示部分の開示の義務付け、残りの文書を開示しないことの違法の確認、残りの文書の開示の義務付けを求める。
 
附属書類
1 証拠説明書         1通
1 甲第1号証ないし第4号証の13写し    各1通
1 訴訟委任状        10通
 
 
当事者目録
 
 
 
    原   告   吉   澤   文   寿
 

    原   告   山   本   直   好
 

    原   告   板   垣   竜   太
 

    原   告   太   田       修
 

   原   告   田   中       宏
 

    原   告   西   野   瑠 美 子
 

    原   告   山   田   昭   次
  
 
    原   告   崔       鳳   泰
      
 
  原   告   李       容   洙
 

  原   告   李       金   珠
 

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    原告訴訟代理人
     弁護士  東  澤     靖
 
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     同   川  口  和  子
 
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     同   二  関  辰  郎
 
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     同   古  本  晴  英
 
〒100−0013 東京都千代田区霞ヶ関1丁目1番1号
    被     告 国
    代表者法務大臣 長  勢  甚  遠 
              行政処分庁      外務大臣麻生太郎
 
一部不開示文書目録
 
1 第4次日韓会談第1回本会議議事録
  決定区分 部分開示
  決定に係る該当条項 5条3号
  決定理由 公にすることにより、交渉上不利益を被るおそれがあるため、不開示としました。
2 第4次日韓会談第2回本会議議事録
    決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
3 第4次日韓会談第3回本会議議事録
    決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
4 第4次日韓会談第4回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
5 第4次日韓会談第5回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
6 第4次日韓会談第6回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
7 第4次日韓会談第7回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
8 第4次日韓会談第8回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
9 第4次日韓会談第9回本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
10 第4次日韓会談再開第1回(第11回)本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
11 第4次日韓会談再開第2回(第12回)本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
12 第4次日韓会談再開第3回(第13回)本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
13 第4次日韓会談再開第4回(第14回)本会議議事録
 決定区分、決定に係る該当条項、決定理由は、1と同じ
 
請求文書目録
 
1  日韓会談開始(1951年10月)前の準備作業に関するすべての公文書
2  第1次会談予備会談(1951年)本会議会議録
3  第1次会談予備会談(1951年)在日韓国人国籍処遇問題会議録
4  第1次会談予備会談(1951年)船舶問題会議録
5  上記以外の、第1次会談予備会談(1951年)関連のすべての公文書
6  第1次会談(1952年)本会議会議録
7  第1次会談(1952年)在日韓国人法的地位委員会会議録
8  第1次会談(1952年)請求権委員会会議録
9  第1次会談(1952年)船舶委員会会議録
10  第1次会談(1952年)漁業委員会会議録
11  第1次会談(1952年)基本関係委員会会議録
12  上記以外の、第1次会談(1952年)関連のすべての公文書
13  第2次会談(1953年)本会議会議録
14  第2次会談(1953年)在日韓国人法的地位委員会会議録
15  第2次会談(1953年)船舶委員会会議録
16  第2次会談(1953年)請求権委員会会議録
17  第2次会談(1953年)漁業委員会会議録
18  第2次会談(1953年)基本関係委員会会議録
19  上記以外の、第2次会談(1953年)関連のすべての公文書
20  第3次会談(1953年)本会議会議録
21  第3次会談(1953年)在日韓国人法的地位委員会会議録
22  第3次会談(1953年)請求権委員会会議録
23  第3次会談(1953年)漁業委員会会議録
24  第3次会談(1953年)基本関係委員会会議録
25  上記以外の、第3次会談(1953年)関連のすべての公文書
26  休会期(1953年10月〜1958年4月)における日韓会談再開のための外交活動に関連したすべての公文書
27  第4次会談(1958〜1960年)本会議会議録
28  第4次会談(1958〜1960年)在日韓国人法的地位委員会会議録
29  第4次会談(1958〜1960年)請求権委員会会議録
30  第4次会談(1958〜1960年)漁業委員会会議録
31  第4次会談(1958〜1960年)基本関係委員会会議録
32  上記以外の、第4次会談(1958〜1960年)関連のすべての公文書
33  第5次会談(1960〜1961年)本会議会議録
34  第5次会談(1960〜1961年)在日韓国人法的地位委員会会議録
35  第5次会談(1960〜1961年)請求権委員会会議録
36  第5次会談(1960〜1961年)船舶委員会会議録
37  第5次会談(1960〜1961年)文化財委員会会議録
38  第5次会談(1960〜1961年)漁業委員会会議録
39  上記以外の、第5次会談(1958〜1960年)関連のすべての公文書
40  第6次会談(1961〜1964年)本会談会議録
41  第6次会談(1961〜1964年)在日韓国人法的地位委員会会議録
42  第6次会談(1961〜1964年)請求権委員会(一般請求権・文化財・船舶)会議録
43  第6次会談(1961〜1964年)漁業委員会会議録
44  第6次会談(1961〜1964年)基本関係委員会会議録
45  第6次会談(1961〜1964年)非公式会談会議録
46  第6次会談(1961〜1964年)日韓予備交渉会議録
47  第6次会談(1961〜1964年)開催期間における日・韓・米三国間の外交交渉の記録
48  上記以外の、第6次会談(1961〜1964年)関連のすべての公文書
49  第7次会談(1964〜1965年)本会談会議録
50  第7次会談(1964〜1965年)在日韓国人法的地位委員会会議録
51  第7次会談(1964〜1965年)請求権及び経済協力委員会会議録
52  第7次会談(1964〜1965年)漁業委員会会議録
53  第7次会談(1964〜1965年)基本関係委員会会議録
54  第7次会談(1964〜1965年)非公式会談会議録
55  第7次会談(1964〜1965年)時の椎名悦三郎外相訪韓関連の公文書
56  第7次会談(1964〜1965年)時の李東元外相訪日関連の公文書
57  第7次会談(1964〜1965年)時の条文作成のための会合関連の公文書
58  上記以外の、第7次会談(1964〜1965年)関連のすべての公文書