第1回口頭弁論後の 報告集会から
●小町谷育子弁護士
私は情報公開訴訟で原告の意見陳述を何回か経験しているのですが、本日は30分という、裁判所としては異例の、かなり、珍しい長さの意見陳述の時間を裁判所はとったと思います。5分とか8分で終わらせてくださいというのが普通です。
次回は、5月8日、同じ裁判所の法廷で10時50分から、被告からの反論ということで、書面は4月末までに提出されます。
反論の書面はどのようなものになるかということですが、訴状の中味は、幾つかに分かれて請求をしております。今日問題になりました、第4次会談本会議記録は一部が開示され、一部が不開示でしたので、何故不開示なのか、被告の方は示す必要があります。
また、他の部分、今日、韓国で公開された文書を裁判所の机に並べて置きましたが、多分あれと同じくらいの文書が日本にもあると思われます。あの文書を、何故、国が公開できないのか、公開しないのか、開示決定がされておりません、まだ開示とも不開示とも答えておりませんので、何故、開示決定がされないのかについて、被告が反論することになります。
また、開示しないこと、そのことについても違法である、とこちらは主張しておりますので、何故違法でないのかを国は反論してくる。
大きく分けると6つぐらいに分けて原告が主張しておりますので、これから、何回か口頭弁論が開かれると考えられます。流れとしては大体こういうことですが、後でまたご質問があればお答えします。
●二関辰郎弁護士
補足しますと、みなさんが裁判所に来てくださり、裁判官に関心が高いことをアピールしてくださるのはいいのですが、情報公開訴訟というのはあまり盛り上がりのない裁判です。今日は第1回目で、先ほど小町谷弁護士が云いましたように、異例の長さだったのですが、2回目以降はそういうことはありません。
一生懸命書いた書面は、今日提出したようにたくさんあるのですが、法廷では、裁判官がボソボソと次回の期日を決めるだけということになります。
今日、廊下で見られたように10分刻みで裁判がおこなわれている。次回は10時50分からですから、11時には次の裁判を入れていると思われる。せっかく来ても「何だ」ということになるのですが、それでも、みなさんに来ていただけると有難い、ということをお伝えします。
●原告 崔鳳泰さん
みなさん、こんにちは。早朝からお越し頂きまして、心からお礼申し上げます。
今日、裁判所へ来て一番感じたことは、これは戦後補償裁判の総決算にあたる裁判、ということですね。その理由は、今、韓国では情報公開の裁判に勝って全面公開させ、被害者たちが政府から少し補償をしてもらったのです。これをみればすぐ判りますね。今回の裁判に勝てば、その先は、韓国と日本の政府が、一緒に解決に向けて手を組まなければなりません。
かつて、韓国政府と日本政府が手を組んで、被害者の人権を踏みにじったというのが事実ではないでしょうか。今、時代が変わりましたから、日本と韓国が手を組んで、被害者の人権を一緒に解決しなければならないと考えています。
そのためには、必ず日本でも文書を公開して、何に問題があったのかを日本政府も認め、また、被害者に対して、できる部分に対して韓国政府と手を組んでやっていけばいいのではないでしょうか。
被害者たちが生きている間に、日本政府と韓国政府が手を組んで何かをして下さい、というのが私の裁判に臨む姿勢でありますし、この裁判に必ず勝てるように、皆さんが今後も暖かい支援と協力をして下されば、本当に幸せです。心から深く感謝申し上げます。
●原告 李金珠さん 17団体による共同声明書の読み上げ【14頁参照】
●原告 吉澤文寿さん
今日は研究者という立場で陳述させていただきました。
私は今まで日韓会談について10年以上研究してまいりましたけれども、日本の公文書を使った研究を、まだ一度もやっておりません。やはりこれを機会に、ぜひ、日本の文書も公開実現することによって、日本と韓国の政府がどのように話し合ったのか、どのようにして過去を隠してしてきたのかということが明らかになると考えています。
そういったことに対して、私は法廷の場では自分の権利を主張したつもりです。つまり、日韓会談文書を私は視る権利があるということを主張しました。我々の知る権利を侵されてはならないということを主張しました。
日韓会談文書の問題というのは過去の真相究明という問題もありますし、それが一番大きいのですが、私をはじめとして日本のみなさん、あるいは韓国で暮らしているみなさんが、情報を知る権利があるということです。
我々が生きているこの世界で、我々が知りたいことを、何の正当な理由もなく公開されていない状況に対して、やはり異議を申し立てる必要がある。これは、かなり政治的な問題だと思うのです。そういうことを主張してきました。
今後も共同代表として、みなさんの支持をいただいて、公開の意義を広めながら、日本の民主主義に対して、我々が日本の民主主義に対して、日本の民主主義を創っていくのだということを主張していきたいと思います。
今日は、どうもありがとうございました。
●安原桂子さん
強制連行全国ネットに所属しています。先ほど、この裁判は盛り上がらないというご説明でしたけれども、文書が出て、次回の期日を決めておしまいということならば、確かにそうですけれども、そのあとで報告集会をしていただいて、文書には何が書いてあったとか、自分たちが何を主張したかというご説明は、していただけるのでしょうか。
●小町谷育子弁護士
もちろん、そうします。そうでないとお手元には何もなく、判らないことになってしまうので、なるべく法律用語を使わないで、噛み砕いた説明をします。
●山田恵子(司会)
例えば次回は、もしかしたら10分で終わるかもしれないけれども、その報告集会というのをやっていただけるのでしょうか。
●小町谷育子弁護士
はい、そのまま引き続きやった方が、多分裁判のあとすぐにやります。
メーリングリストなどでは限られた紙面なので、こういう主張でというのをコンパクトにご説明した方が判り易いと思いますので、私たちも報告集会を準備いたします。
●岩月浩二弁護士
名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟弁護団の岩月です。私は傍聴席が騒ぐのは嫌いなタイプなので、今日は一般傍聴者として傍聴していて、被告・国が4月末まで何故出さないのか、何故、今頃理由を考えとるのかと、さっぱり判らない。理由をつけて非開示にしたわけですから、何で4月まで時間をとるのかと、野次りたくなりましたね。どう考えたらいいのでしょうか。
●小町谷育子弁護士
そうですね。私は情報公開訴訟をこれまで2〜3件やっているのですが、「書面を提出するのに2ヶ月ください」、「3月は異動があるので、その間は避けてください」ということで、2ヶ月か2ヶ月半後にしか毎回期日が入らないという形です。
情報公開ですから、今この文書を見たいということで訴訟をしているのに、判決が出るころには最初の盛り上がりの気分も欠けているということになりかねない。
そういうことは弁護士の方からも、勿論、原告の方からも、もっと早く出せという形の、期日の入れ方をして、少しでも早めていけるかと思います。
●岩月浩二弁護士
理由は無いのに、今回は非開示にしたのですね。後で理由を付けるということですかね。
●小町谷育子弁護士
国の場合はわりにそういうことがあるのです。取りあえず非公開にしておいて、訴訟になって途中で出すということが結構多いですね。
情報公開訴訟は、途中で証拠として出すのと同時に、最初の処分、非開示だった決定の処分を取り消して、開示するという決定をもう一度するのです。
最初の処分が無くなる、取り消されるので訴えが却下されるということになるのですよ。そういう訴訟が実はもう何件もありまして、このこと自体、国の情報公開請求に対する姿勢というのが、情報公開法を適切に運営していないことの現われだと思うのですけれども、そういう事例は非常に多くあります。
●山田恵子(司会)
みなさん、口頭弁論を傍聴なさった感想はいかがでしたか。また、感想でなくても結構ですので、ご自由に発言なさってください。
●東澤靖弁護士
今、世間を騒がせている安倍の発言とか、アメリカの議会への発言とか、こういうのは一体どうなっているのか、どなたかご存知の方は報告してほしい。
●共同代表 西野瑠美子さん
昨日、安倍首相は予算委員会で、もしアメリカで決議が採択されたとしても謝罪はしないと発言しました。最近は「狭義の強制連行」を持ち出して、軍・官憲が家に押し入って連れ出したという狭義の強制連行は無かったといっています。一体いつ、強制性の定義を広義と狭義の強制連行に分けたというのでしょうか。河野談話の強制の認識は「本人の意思に反した」ものです。
昨年、アメリカの下院外交委員会で「慰安婦」問題を巡る決議案が提出されましたが、本会議に掛けられませんでした。この背景には日本政府の強烈なロビングがありました。日本政府はロビイストに月額6万ドル、日本円で月700万円以上ですか、これを使って妨害工作をしていたことが判明しています。
今回は、民主党のマイケル・ホンダさんをはじめ超党派の議員で決議案を提出しましたが、今回も日本政府の強力なロビングが行われています。
アメリカ議会は3月末で休会になります。その前に採択の動きが出るか、非常に微妙です。当初、今回は大丈夫だという楽観論もありましたが、油断はできない状況です。
日本では、2月末に「日本の歴史と歴史教育を考える議員の会」、これはNHKの番組に圧力を加えた議連ですが、彼らが提言をまとめて安倍首相に提出しました。その中には日本政府に対して、官憲による強制連行は無かったと表明しろということも盛り込まれています。民主党の一部議員も議連を立ち上げて「河野談話」見直しの動きを進めていますが、「慰安婦」問題は今、最大の山場に来ているといえます。
韓国の「慰安婦」被害者、李容珠ハルモニは、「慰安婦」問題の解決は本当に日韓条約で完全かつ最終的に解決とされたのか、そうであれば、その議論のプロセスを知りたいと訴えて原告になられました。当時、どのようにして自分たちの人権侵害がおこなわれたのか、情報公開を通してそれを知りたいと訴えています。李金珠ハルモニも言われましたが、李容珠ハルモニも、自分たちの権利が閉ざされたプロセスを知るのが、私たちの権利であるとおっしゃっています。
今、河野談話をないがしろにする動きが強まっていますが、この情報公開を求める運動と併せて大きな世論を作っていきたいですね。日韓会談文書公開運動の意義を広く人々に知らせていく上でも、今が絶好のチャンスです。
●安原桂子さん
国連特別報告者が日本の人種差別についての報告書を昨年、発表しました。日本は差別に満ち満ちているという内容です。それに対して政府が珍しく早目にレポートを出しました。ですが、そのことについては何も云わない。
IMADRというNGOが国連のウエブサイトを毎日、探していたら、日本政府の反論書が英語でついていた。日本政府に対して、出しているじゃありませんか、日本語の原文をくださいというと、そんなものは出せないと云って未だに出さない。これが日本の国の運命を左右するようなことを云って出さない。
外務省にはそういう体質があるみたいですね。
情報公開という点では、アメリカでは1997〜2005年の間に、ロビイストが日本大使館からどういう任務を頼まれ、幾ら貰ったかを何ドル、何セントまでウエブサイドで公開されています。
これを見ると2001〜2002年にかけて、第二次大戦中、日本軍の捕虜となって強制労働をさせられた元米兵たちが日本企業を相手に裁判を起こしたり、議会で彼らを支援する法案が出されていた頃には、ロビイストへの支出がぐっと増え、6ヶ月間に1億円以上を払っていたが、2003年に元捕虜たちがサンフランシスコ平和条約で裁判に負け、議会でも支援法案が駄目になった時点で金額はガクッと下がっている。
日本政府は、ロビイストにかけた金は日本の安全保障に関わるから秘密だなど言っているが、こういうアメリカの政策に干渉するような活動は、アメリカにとっても国の安全保障に関わるかもしれない活動なのだから、米国民には知る権利があるわけで、堂々と公開されるべきとされている情報なのです。
●信川美津子さん
日本軍「慰安婦」問題行動ネットワークの者です。李容珠さんは、アメリカ下院での公聴会を終えられた。
記者会見の席で下院議員たちは、日本は散々侘びをしている、謝罪し補償を238名が受け取っている。手紙を添えたお金も渡している、そのコピーも持っていると手紙を示して、日本は充分なことをしているので、この話はもういいじゃないかと、下院議員から流れている。それは国民基金で、韓国、台湾、フィリピンで受取った238名のことで、国別に何名の受取り者がいたとか、そういうことも明らかにできない。
李容珠さんは謝罪の手紙は見ていない、本人には何も無い。また、一緒にいた家族が知らない間に、夜、自分は連行されている。李容珠さんのお母さんは、娘が急にいなくなったので井戸の中を探した、井戸に入って娘を探した。これが強制連行でなくて何なのかと訴えた。
●持橋多聞さん
強制連行全国ネットです。西松建設の中国人強制連行訴訟は、広島地裁で棄却されましたが、高裁で逆転勝訴しました。最高裁で勝訴が確定すれば、日本の裁判は非常に大きな大飛躍を遂げる、ということだったのですが、最高裁は、日華条約と日中共同声明等によって、個人の請求権も消滅したので論議をしないとして、3月16日に尋問弁論をやります。
国は、消滅したということにこじつけたいという意図がありありです。もう何人かの方に、このハガキは行渡っていると思うのですが、まだ、間に合いますので、ご協力をお願いします。
●高橋信さん
名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟、代表世話人の高橋です。5月31日には、結審から6ヶ月経って判決が出る。その間、名古屋高裁に対して、個人署名を韓国で2万筆、日本で3万筆を集めた。現在、団体署名を行っている、昨日現在、445団体から署名をいただいたが、求める会にもお願いしたい。
弁護団長にお尋ねしたいが、この訴訟はものすごく重く、難しい裁判なのに、裁判のための裁判をしているような気がしてならない。これから運動をどう広げていくのかも含めてお応え願いたい。
●東澤弁護士
裁判のための裁判をしている、とのことですが、情報公開の裁判というのは、国がイヤだというのを、無理矢理にでもこじ開けて開示させていくしかない。
この日韓会談の内容、いわゆる戦後の補償、韓国、或いは他のアジアの国々と、どういった理論を付けて無理矢理話を付けてきたのか、これは残念ながら我々の前に明らかになっていない。ずっと外務省は隠してきた。
これが1990年代の戦後補償の裁判で重石になってきている。何らかの形で一体、これについては何があったのか、何が話されたのか、それが我々にどういった影響を与えたのか、ということをはっきりさせなければならない。
我々はもっと早くやっておくべきだったが、できていない、やらなかった、それが韓国でできた、我々にもできない筈はないではないか、これが今回の訴訟になった。
残念ながら、向こうがイヤだと云ったら、こちらは裁判でこじ開けるしかない。政府の態度を変えさせるという運動もあるのですが、まずは裁判を中心においてやっていく。
その上で、やはり韓国では最終的には政府が決断したように、この情報を、記録した歴史的事実を隠しておく理由は無いじゃないか、そういうふうに、この民主国家において、政府に思わせなければいけない。そのための運動というのは、私は絶対に必要だと思う。
ですから、裁判のための裁判ではなくて、真実を我々の前に明らかにするという大きな流れの運動なのです。実際、日本の裁判は手続きなどで面白くないことも多いです。でも、みなさん、できるだけ参加してください。
裁判の中味は、こういった集会でお伝えします。これからも、ご参加よろしくお願いします。
●山本直好さん
裁判が始まる前に、外務省の情報公開室に行って、昨年の8月17日から半年近く経っているが、その後の状況を教えてくれと云ったところ、来年が回答期限となっているが、具体的には何も進んでいない。裁判で出てきているようなので・・・と言っていましたが、要するに放たらかしでした。
●匿名の方
私は会員でも何でもありませんが、この裁判のことを知ったのは3日前、このチラシを見て今日参加した。アピールの方法について、うるさいくらい集会に出かけていってチラシを配ってください。
(記録 事務局)